先日の生放送の翌日、帰りの飛行機まで少し時間があったので、東京駅近くの三菱一号館美術館で、オーブリー・ビアズリーの展覧会を見てきた。
ビアズリーは、毒のあるペン画で、日本でも挿画家や漫画家に絶大な影響を与えた人だ。
オスカー・ワイルド「サロメ」の挿画が有名で、20歳でデビューして25歳まで大活躍し、ものすごい影響力を発揮して、あっと言う間に死んだ。
昭和の新聞小説の挿画や、少女マンガを見ると、「もろにビアズリーだなあ」と感じさせる絵が多いし、今回も展示を見ながら、つげ義春に近いところもあるなあと思ったりした。
挿画の人なので、印刷物で見たことのある作品が多かったけど、一部肉筆が展示されていた。
特に、「猿を連れた婦人」という作品に見惚れてしまった。
光の差し込むカーテンが描かれているのだけど、実物の絵は、外の光とカーテンの輪郭との境目に、同じモノトーンでも、ペンと筆、鉛筆を使い分けて、透け感やぼやけ感のある表現が作り出されていて、本当にふわっとした光がそこにあるように描かれている。
「サロメ」の挿画で評価されて人気者になった頃の絵は、すごく毒気があって、自由奔放で、風刺精神満載、物議を醸しまくったのだけど、最後の1年ぐらいの絵は、どんどん絵が洗練されていって、ものすごく精彩でうまい絵に変化しているのもよくわかった。
すごいセンスと才能だなあと思う反面、最初と比べて、毒気が抜けていくので、さみしくも感じた。
その頃の作品は、どれも大絶賛されたと書いてあり、たしかに凄いと思うのだけど、なんだか悲しい気持ちにもなった。
稼ぐためには、世間に受け入れられる絵を描かなければと思うようになっていったのかも? と想像したり。
あまり洗練されたキレイな絵は、ビアズリーじゃない感じがしてしまう。
圧倒的にビアズリーなんだけど。
途中、卑猥な絵が描いてあるということで、「18歳以下入室禁止」の展示室があって、ものすごくびっくりした。
美術館って、最近はこうなの!?
ちなみに、その部屋に展示されていた絵、普通に、今売られている『芸術新潮』に掲載されてますけど……。